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God Save the Suits Cloths 神よ、スーツ服地を救いたまえ。

Margaret

近年、英国服地業界の近代化は著しい。イングランドに限らず、スコットランド、アウターヘブリティーズ諸島を含め、いずれのミル(織物工場)も最新鋭の織機やコンピュータ管理による生産設備への転換が軒並み進んでいるからだ。

その背景には、グローバル化がもたらした外国資本の存在がある。

かつてイギリスは、‘60年代からはじまる「英国病」に悩まされていた。これはご承知の通り、手厚い社会保障制度(年金、医療保険)や主要産業の国有化がもたらした経済の停滞の時代を表現した言葉である。この時期、多くの英国企業は労使紛争(ストライキ)に手を焼き、製造拠点は海外へと移転し、国内の設備投資も大幅に激減した。さらに、オイルショックがこの経済停滞に追い打ちをかけ、自国のプレーヤーがいない「ウインブルドン状態」と揶揄されたように、外国資本のプレーヤーたちの軍門に降る状況を招いた。

‘80年代のサッチャー政権による大鉈(おなた)を端に、ブレア政権におけるサッチャーリズムの継承で「英国病」はすでに克服されたと言われているが、国際競争力の面で劣勢に立っていた英国服地業界では中々好転しなかった様子がうかがえる。つまり、長年、設備投資の停滞(旧弊な生産設備)や技術開発面での遅れを抱え続けていた。それが、21世紀に入ってから外国資本の流入で劇的に変化するわけである。

しかし、我々テーラーにとって諸手を挙げて歓迎できる状況とは言いがたい。なぜなら、生産設備の最新鋭化がもたらすベクトルが明らかに効率・高収益化へと直進しているからである。速く大量にかつ安価に織り上げる最新鋭織機。飛躍的なスピードで毛糸を作り上げる製糸工程。これらは、旧来の英国製服地とは無縁の飛び道具であり、必ずしも仕立てのいい旧来の英国的洋服に求められるクオリティを好転させるものではないところが問題と言えよう。

皮肉にも、英国産業が停滞していた時代の方が、旧来の非効率で手作りのような服地を織り上げることができた。産業革命時の面影を残す遺物のような生産設備からつくり出される「骨のある」服地はこの先、間違いなく消えゆく運命にある。「バタク」が英国の老舗ミルへの特別注文を止め、ヴィンテージやストック服地を探す理由がここにある。しかし、いつかはヴィンテージも旧品ストックも底をつく。そのためのミル(織物工場)探しを続けてきた結果、幸運にも設備投資ができなかった機屋(はたや)との出逢う機会に恵まれた。「バタク」のオリジナルバンチ(生地見本帖)にはまさに旧来の英国製、あるいはそれ以上のクオリティを持った服地が大量に用意されている。

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Bespoke Tailor batak.