ジャマイカやバージン諸島を抱えるカリブ海には、かつてさヨーロッパのまざまな国が植民地を
領有していました。イギリスはもちろん、フランス、スペイン、アメリカなども領地を確保し、
貿易や観光などの経済活動で大きな利益を享受してきた歴史があります。
被支配国であった国々は多くが独立を果たしましたが、いまでも領有していた国々の風俗や建築様式が
残っており、カリブ海的なコロニー文化が定着しています。サトウキビの貿易や原油生産(カリブ海では年
に1億7000万トンの原油が生産されており、世界最大級の原油生産地域)などが有名ですが、
やはり美しい海を背景とした観光資源はカリブ海の最大産品。ヨーロッパから見れば避寒地として
富裕層に愛されてきた歴史があります。いまでも、功成り名を遂げて富裕層の仲間入りをした人々の間では、
カリブ海の島に別荘を持つことがステイタスなのです。1960年代以前においては、注文服が
常識(既製服自体が少なかった)であり、避寒地で着る服をひと揃い誂えては美しいリゾートへと
旅立ったと言います。ロンドンの注文服屋もそんな富裕層の注文に応えて、綿や麻のリゾートウエア、
島々で毎夜催される夜会を楽しむためのフォーマルウエアなどを供給していました。
別荘に長逗留する人のために、ロンドンからテーラーがバンチを携えて採寸をしにカリブまでやって来た
という逸話も伝え聞こえております。蕩尽はまさにどこまでも。
