Blog

夏の終わりにつらつらと考える。

仕事をする上で道具としてのスーツがあります。例えば、少々ハードに着用しても破れないような特殊素材を使い、汚れたら家で丸洗いできる機能性に特化したスーツのことです。その真逆にあるのが着用するのに気を使うスーツです。例えば「このスーツを着て現場仕事はできないな」「雨の日や出張には着て行けないな」「シミや汚れが付いたら嫌だな」「ちゃんとしたクリーニングに出したいな」etc、これはそれだけ愛着があるスーツということなのです。ここ数年でビジネス環境が大きく変化し、それに伴いアパレル業界も機能性に特化したビジネススーツを販売するようになりました。それを否定するつもりはありませんし、ニーズがあることも承知しています。しかし、そのスーツはただの道具であり、果たして愛着が生まれるとは思えないのです。お客様との会話の中で趣味のクルマであったり時計やカメラ、ゴルフ道具や釣り具などの話題になることがしばしばあります。話を聞くと皆さんすごく気を使いながら、そして愛情を持って使用していることが分かります。愛用するモノへの思い入れと拘りがびんびん伝わってきます。ただの道具ではないことがよく分かるのです。言い換えれば、それらのモノは持ち主のアイデンティティであり、自信の支えであり、心の拠り所となっているように思います。もちろんバタクでお作りいただいたスーツも然りです。ビジネス環境の変化に加えて、コロナ禍によりテレワークが増えたことで “スーツ離れ” という言葉を耳にすることが増えました。これは致し方ないことです。先日、あるお客様が「必要のないスーツを作りに来たよ」と笑顔で来店されました。必要のないスーツの必要性、この意味は大きいなと思った次第なのです。(バタク大阪 工藤)

PS.夏季休暇は奥琵琶湖にある「L’Hotel du Lac /ロテル デュ ラク」でのんびり過ごしてきました。鳥と虫の鳴き声しか聞こえてこない非日常的なロケーションに癒されました。季節を変えて何度でも行きたいおススメの宿です。