Column

Mariage

服を誂える魅力、まとう喜びについてコラムで何度も想いを語ってきた。今回は少し広げて仕立て服に常に寄り添ってくれる「靴」について語ってみたい。顧客に既製服では味わえない着心地を体感してもらうことがテーラーの目標の1つとするならば、それは靴=注文靴についても同じことがいえる。シューメーカーは顧客の溜息が思わず漏れるようなフィッティングを目指して木型を削るのだ。

歴史的にもロンドンではテーラーとシューメーカーが、隣や同じ建物内に店を構えることは珍しくなかった。特に乗馬やハンティングを専門とするテーラーやシューメーカーはフィッティングなど特に綿密な連携をとっていたようだ。ハッキングジャケットからブリーチズあるいはジョッパーズ、そしてブーツと完璧なつながりを実現するために。

注文服や注文靴を経験されたことがある方はとうにご存知だと思う。革の色に合わせてボタンの色を決めたり、トラウザーズの裾幅に合わせて靴のノーズ長さを調整したり、生地のフォーマル度に合わせてメダリオンやパーフォレーション等の装飾を加減したりして服と靴の調和をとる。

服が靴によってさらに活き、格式を高くすることも、敢えて少し崩すことも出来る。ハーフ(セミ)ブローグからフルブローグに変えるだけで足元から力強さが伝わってくるし、黒靴から茶靴に履き替えれば同じスーツも別物に見えてくる。そう、拘りと遊び心とを靴とのマリアージュにて遺憾なく発揮出来るのだ。

もしあなたが特別な1足をお持ちなら、それに合わせた1着を誂えるというのも心が躍る。