ヴィンテージと名の付くもの。本来はワインの製造年を表す言葉だが、転じて古く価値の高い品物に対しても使用される。ヴィンテージ・カー、ヴィンテージ・ウォッチ、ヴィンテージ・ギターなどがそうだ。服においてはヴィンテージ・クローズ
そして仕立服においてはヴィンテージ服地という存在がある。
服を誂える際にヴィンテージ服地を候補に入れるという方は多いのではないだろうか。単純な古さではなく、原毛の質の違い、糸の違い、現行生地との色柄やウェイトの違い、美意識の違いなどそこには当時の服地ならではの魅力が存在する。古着を着ることでは得られない、自分だけの1着を作ることが出来るという満足感もある。
ヴィンテージ服地はプロダクトでありながらマテリアルでもあるという特殊な存在であり、時代時代の忘れ形見のようなそれは、ヴァイオリンやギターなどの楽器の制作に使われる、何10年と熟成された木材のようだ。
無論、古ければ良いというものではない。そして織屋やマーチャントの名前でもない。テーラーの知識や審美眼に応えるようなものは数少なく貴重だ。現代まで鋏が入るその時を待ち侘びてきた生地をどう仕立てるか、やりとりをしながら形にしていく。そうして出来上がった服には歴史を纏うというロマンがあるのだ。