流れるような曲線。腹の底に響くエンジンの轟音。漂うガソリンの香り。Goodwood Revivalーは英国Chichester郊外で毎年9月に開かれるクラシックカー・ミーティングーでの体験は、何年も経った今でも鮮明に覚えている。1940年代から1960年頃までのフォーミュラカー・GTカーなど往年の名車たちが会し、歴史に名を残す車の数々がサーキットを駆ける姿には感動すら覚えた。“1920年代から1960年代頃までの装い”というドレスコードも設けられ、会場全体が当時にタイムスリップしたような雰囲気だ。
クラシックカーの有機的で優美な姿には胸が高鳴ると同時に温かみを感じる。空力や安全面では現代の車に軍配があがるのだろうが、人の手で設計されていた時代の車のように心に訴えかけるものは多くない。AIの成長が目まぐるしい昨今、作り手が人から機械に取って代わられていくことは想像に容易い。
そのような中でも、未だ服や靴などビスポークの世界では伝統的な手法や対話を経て物作りが行われている。激しく変わる時代に、現代人も“人の手でしか出来ない表現”に魅せられているからではないだろうか。顧客の真の魅力や個性は人と人とのインタラクションの中でしか表出してこないのだと思う。