数多あるヴィンテージ生地の中でも一目置かれる存在なのが「モクソン」です。今回は70年代初頭のモクソンの生地で仕立てたスーツをご紹介します。色柄はネイビーのオルタネイトストライプ。難易度の高い印象があるオルタネイトストライプですが、モクソンの場合は然に非ず。ご覧のように縞の色や幅のバランスが絶妙なのです。実は、オルタネイトストライプこそ注文服に相応しい柄でもあるのです。体に合った適正なサイジングと補正を行うことで着る人と縞が調和するのです。スーツを触ると、ふっくらとした膨らみと柔らかなタッチから特別な生地であることが分かります。この稀有な生地は、出来上がった糸を長期間寝かせることでテンション(緊張)を緩めてやり、糸が最良の状態になった時点で生地にする製法が用いられています。今では考えられない手間のかかる製法です。モクソンにはスーツ好きなら一度は袖を通したくなる魅力があるのです。

