Column

日本のビジネスマンにこそ。

ターン・バック、ボンド・カフスなどとも呼ばれている変則的なカフス。この一風変わった袖が、初期ボンド映画ではジェームズ・ボンドのアイコンとして描かれていました。この風変わりなデザインにはどんな意味や目的があったのでしょうか。60年代当時、英国ではテリレン等の化学繊維による新素材が火付け役となり、出張を想定したビジネススーツが数多く出回るようになりました。海外渡航や長期出張も頻繁に行われるようになったのでしょう。同時に旅行用の服装品も増えつつありました。ボンド映画で有名な変形カフスも、実はこの流れの中で生まれたアイテムのひとつだったのです。目的は明快でした。旅先やビジネス出張先ではダブル・カフス着用時に使うカフリンクスを紛失したり、コロコロと床に落としたり、不便を被ることが多かったため、現代的な解決方法がターンバックだったわけです。その証拠に、初期のボンド作品において派遣先・出張旅行先のシーンでは必ず変形カフスをチョイスしています。シャツカフスのデザインについてはロンドンの「ターンブル&アッサー」が手掛けた、と喧伝されていますが、ボンド映画第一作以前は別のシャツメーカーによるもので、俳優のデビッド・ニーブンが着用しており、それを忠実にリメイクしたようです。

Photo by FROM TAILORS WITH LOVE  Peter Brooker/Matt Paiser