Column

Christmas is around the corner

いつの間にか街にはクリスマスソングが流れて来るようになった。やがてベートーヴェンの9番交響曲にバトンが渡り、1年が終わる。

パーティや会食などドレスアップすることの多い時期である。ブラックタイやフォーマル度の高いスーツなど、華やかな装いを堪能したい。あるいは視点を変えて、自宅でゆっくりとクリスマスカラーのニットや好みのボウタイやクラヴァットなど身につけて寛ぐのも楽しい。友にはアガサクリスティの短編作「クリスマスプディングの冒険」など、いかがだろうか?ポアロのシリーズとしては珍しく人が亡くなることなく、英国の伝統的なクリスマスを擬似的に体験することが出来る。クリスマス・プディングとは英国の代表的なクリスマス菓子だ。ブランデーに漬け込まれたドライフルーツやスパイス、ビーフスーエット(日本ではケンネ脂と呼ばれる牛脂)などから作られる。家庭では主にアドベント・サンデーの1週前の日曜日に家族で願い事をしながら材料を混ぜ合わせ、蒸しあげてクリスマス当日まで寝かせておく。実に濃厚で玄人好みの味わいで英国人でも好みが分かれる、大人の味だ。初めは英国のクリスマスに懐疑的であったポアロがクリスマス・プディングを美味しそうに食べているシーンには思わず笑みが溢れるだろう。

師走というように12月は何かと忙しいものだが、忙しいだけではあまりに味気ない。とっておきの服ととっておきの時間をバッハの『クリスマスオラトリオ』の冒頭、ティンパニの八分音符のように意気揚々と過ごし、『第九』のコラールのように祝祭感たっぷりで1年を締めくくりたいものだ。