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Special Interviews
藤巻 幸夫氏
―― つくってみてビスポークをどんなふうに捉えるようになりましたか?
藤巻氏: ネットが発達して、コミュニケーション手段が多様になりましたが、いちばん大事ではないかと思っていることは、人と人が目を見て話すことと、実際に自分で体験したことを信じることです。それが、僕の生き様であり、あらゆる行動の尺度と思っています。まず人と人の邂逅があり、その延長の中にモノなり商品があると思っていますので、作り手と膝をつき合わせて話しながらモノをつくるビスポークという考え方が40歳を過ぎてきたらすごくわかってきた。「こういうものを着てみたい」、「あの人はアレを着ていたけど、僕はこうじゃないと似合わない」と考えているうちに、スーツよりも遊び心があって自分らしさを表現できるセットアップ的な着方の方が自分に合うと思うようになった。これは、中寺さんと対座しながらコミュニケーションして煮詰めていった結果です。この結論を互いが共有できるようになると、今度は「こういう生地でどうですか?」という提案が中寺さんから来る。それこそが人が創り上げていく文化じゃないですか。ビスポークテーラーを僕は「メシ屋みたいな服屋」と言っています。メシ屋で旨いものを食いながら、人が集まって、夢を語ったり、自分の仕事を語ったりする。「メシ屋みたいな服屋」っていいなと思いはじめたのは40歳くらいの頃からです。なぜかというと、それまでの20年間は伊勢丹に勤めていて、お客様は毎日不特定多数のいろんな人が来る。それがどうも居心地が悪くなってきて、特定少数の方とじっくり時間をかけて向かい合う方が楽しいのではないかと思って独立したわけです。結果的にテーラーと向かい合って服をつくることで、濃い人間関係ができていくことの楽しさを知った。人間関係とはブランドだと思います。その集団に名前はないし、知らない人には見えないものですが、何かカタチというものが出来上がる。そういうことが素敵なんじゃないかなと思うようになった。僕にとって洋服というものは、素敵な人たちと出会うキッカケであると捉えています。
―― ところで、企業のコンサルティングやビジネスノウハウの講演を行い、多くの著書を上梓し、大学に講座を持つ藤巻さんが、シャツ&バッグのお店「CRUM」をはじめた理由は?
藤巻氏: シャツ屋を始めたのは、単純に好きだったからです。ドレスアップする質のいいシャツはbatakにもあるし、世の中にもたくさん出回っています。けれども、ドレスダウンした時に自分が着たいシャツがない。スタンダードですが、ちょっとヒネリがあり、遊び心があるもの。それは、「可愛い」と言い換えてもいいかもしれません。女性は男性のようにウンチクがありませんが、「可愛い」ということに対して非常に敏感です。なぜかそういうセンスが自分の中に芽生え始めて急にシャツをつくりたくなった。同時にトートバッグもつくりました。バッグも大好きなアイテムで、実は僕のワードローブの中はバッグだらけ。ウチのバッグは、帆布製で気軽な値段、モノを入れたときに崩れない丈夫さを持つ。このジャンルのバッグは、イタリー製が典型ですが、黒い裏地を使用する傾向があります。汚れないためだと思いますが、それは作り手側のワガママ、独りよがり。
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