batak WEB MAGAZINE
Top Features/Tribute to Suits Special Interviews Lifestyle Column Tailored Talk About batak
Special Interviews
―― いま、肝硬変や肝ガンの患者が多いと聞きますが?
池田氏: 肝臓病というのはウイルスやアルコールなどいくつかの要因で悪くなります。いちばん多い要因はウイルス性ですが、これらのさまざまな要因にかかわらず、肝硬変というのが最終段階となります。治療方法というと、実は私が医師になった頃は肝硬変を抑制する最適な方法がありませんでした。ところが1990年頃に「インターフェロン製剤」という薬が応用され、ウイルスを駆除することが可能になり、病気を治すことができるようになっています。したがいまして、「インターフェロン製剤」による治療によって患者さんが減りつつある。けれども、発病してしまった方がたくさんいらっしゃるので、いまがちょうどピークでプラトー(停滞期)に達しているのではないでしょうか。おそらく今後10年〜20年で、ウイルス性肝炎やそれによって起こる肝臓ガンは減っていくと予想されます。
―― 肝臓病の最先端治療の現場でお仕事されて30年近く経つそうですが、現在の状況はいかがですか?
池田氏: 大学病院の研究者としては60歳前後というのが一応ゴールになります。ですから、50歳を過ぎると何となく先が見えてしまう。そういう意味で淋しいな、という感覚が正直あります。しかし、残された10年前後でバントヒットみたいな仕事ではなく、ホームランのような仕事がしたいという熱い想いも心に秘めています。なかなかそうはいかないかもしれませんが(笑)。たとえば、肝臓病の臨床を変えるような画期的な事実を見出して学会で発表できたらうれしいですね。
そうそう、batakでビスポークをお願いしたのも、50歳になった記念みたいなものです。それまでは、まったくオーダー・メイドとは縁がなく、「柄」とか「色」で服選びをしてきたタイプです。数年前ですが、デパートで開催されたオーダー会で中寺さんのお仕事を拝見する機会がありまして、その時見たスーツが格好良かった。たぶんジェームズ・ボンドのスーツでしたね。即座に買い求めはしませんでしたが、中寺さんが代官山でビスポーク・スーツのテーラーをやっていらっしゃるとお聞きして、代官山を訪ねたのが最初です。一度ビスポークを体験してみると、フィットするということが、“寸法が身体に合う”だけでなく、“自分らしさに合う”という意味を持っていることがわかってきました。
―― 現在のスーツのご趣味であるトラッドなテイストを志向された理由は?
池田氏: 根本的にはトラッドな服が粋だと思っています。高校〜大学生の頃も、ごく控えめなクルーネック・セーターを着て、上品なイギリスの学生が着る服を選んでいた記憶があります。基本的に伝統的なアイテムであまり派手すぎないものが好きですね。
東京で生まれ育ち、学校は中・高校一貫の私立高校。制服があるにはあったのですが、6年間ずっと私服で通しました。男子校で、まわりの友人は服装に興味のある者が多かった。その影響がトラッディショナルな志向に目覚めたきっかけでしょうか。期末試験や中間試験が終わった後、友人たちと息抜きに渋谷に立ち寄っては格好いい服を見に行く。そんな学生生活の中で、服装に対する自分のスタイルを確立していったのかもしれません。
池田 均氏
池田均氏:1957年、東京生まれ。都内の大学病院で医師および教鞭を執る。専門は消化器で、肝臓病のスペシャリスト。主な著書には、専門の研究論文の他に、総説に「リゾリン脂質と肝臓(臨床化学)」、「消化器疾患における血清オートタキシン(臨床病理)」、一般書に「新検査のすべてがわかる本(分担執筆、時事通信出版局)」などがある。
PAGE1 PAGE2 PAGE3
© 2011 Nobel Note all rights reserved. batak Bespoke Tailor
INDEX