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Special Interviews
中寺 広吉氏
PHOTO BY RYOICHI YAMASHITA
中寺広吉/NAKADERA HIROYOSHI|MEN'S BIGI、COHIBAのパターン製作部門を経て独立。ビスポーク・テーラーリングの基礎および実践での修業後、(株)NOBEL NOTEを創業。パーソナルオーダーを手がけた後、1999年、代官山に「batak」をオープン。2003年よりパターン・オーダーおよび既成ラインのスーツ「batak House Cut」を伊勢丹、阪急などで展開。2007年には東京新丸ビルにパターン・オーダーおよび既製ラインのリテイル・ショップをオープン。
―― 理想のスーツ姿はクライアントに何をもたらしますか?
中寺: batakの真の目的は、「男の優雅さ」、「優美さ」、「気品のある控えめな身のこなし」といった「知」の価値をテーラードウエアというカタチにしてお渡しすることです。それによって、クライアントの持つキャラクターが引き立ち、魅力を倍加させる。要するに、batakにスーツを作らせることでクライアントの立ち居振る舞いとともに知性にもに磨きがかかることです。これこそが、batakの存在意義であり、社会的使命であり、クライアントにもたらす最終価値でもあると考えています。ですから、テーラーリングの技やスキルといったものは、たとえそれが圧倒的に優れたものであったとしても、男の魅力・知力を創造するための効果的な手段に過ぎないと考えています。
―― 「知」の価値をお渡しするとうのはたやすい話ではないですね?
中寺: 単にマニアックな洋服製作やレトロ趣味を追い求めるという話ではないので、確かに簡単なことではありません。クライアントと向き合ってオーダーを煮詰めていく作業は、すべてが真剣勝負です。こう言うと、ちょっと大仰な話に聞こえるかもしれませんが、スーツが輝いた時代の背景には、20世紀に入ってからの男性社会の美学や理想主義が機能していたと思っています。男性だけの貴族的な社交クラブであり、高級軍人のサロンであり、同性愛が横たわるアートの世界であったりしたわけです。そういうものをひっくるめた文化みたいなものが男性の装いを洗練の極みへと高めていった歴史があります。しかし、それらは大衆化社会の到来など時代の変化の中で、伝承されず、否定されたり、デザイナーのクリエイティビティの名のもとに都合良く曲解されたりしているのが現状です。だからこそ、20世紀の前半の富裕社会や芸術文化が磨き上げた「男の美しい生き方」とはどういうものだったのか。美しい男を演出するための本来あるべき、あるいは「語り継ぐべき服飾のあり方」とはどういうものなのか。常に自問自答を繰り返しながら、その糸口を現代の審美眼を持つ男性たちに向けて提案・提供したいと奮闘しているつもりです。実は、batak Web Magazineを始めた理由もそうした男の美学をクライアントの皆様と共有するためでもあるわけです。
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