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Special Interviews
中川 一康氏
―― 青山のスタイリッシュな直営店舗には驚かされましたね。
中川氏: 青山店は“サプライズ”というコンセプト。お客様を驚かせ、その上で満足を与えられたら、オモシロイじゃないですか。通りを歩く人から見れば、靴の修理屋がキラー通りに店を構えて、これ本当に靴の修理屋なの?と思えるようなヨーロッパの街並みにある古風な店舗外観。それでちょっと入りにくくしておいて、入ってきたお客様にはホスピタリティ120%で応対する。期待を超えるうれしい裏切りって、とても重要だと思っています。中には“靴の修理屋”と聞いて驚かれる方がまだいて、「こんなところでやっていけるの?」なんて余計なお節介をしてくれる人もいますけどね(笑)。
自分が日々生活していて、たとえばレストランなどでサービスを受ける場合、まれに失望する場合があるじゃないですか。期待していたのに美味しくなかったとか、料理は美味しかったけど、サーブが悪かったとか。偉そうなことは言いませんが、そういう小さな“がっかり”を感じさせることだけはしたくない。僕がこの仕事に魅力を感じた原点のひとつには、やはり接客の楽しさがありますからね。とはいえ、接客マニュアルを作るとかそういうことじゃなく、個々のスタッフのホスピタリティ感覚みたいなものに期待しています。やはり、接客というのはセンスがありますから。折に触れて、「自分がもしそんな対応されたらどう思う?」という話を店頭スタッフとしますね。おかげで、常連のお客様も増えましたし、店頭のイケメン・スタッフなどは女性のお客さまにもご贔屓いただいています(笑)。
―― 類似の業態が後発で軒並み開業していますが。
中川氏: ひとつのユニークな業態を確立したという段階は終わりましたね。ウチのように、ファッション雑誌に紹介されるようなシュー・レストア店が後発で続々と出店してきていますから。そういう意味で、ビジネスについてもう一度戦略なり、方法論を再確認したり、再構築したりする必要があるかもしれません。ウチに限らず、ビジネスとして頭を使っていかなきゃいけないのはこれからだと思います。
本当に「手作業が好き」、「靴が好き」ということで立ち上げている会社がいる一方、マーケティングの視点からこれはビジネスになるなと考えて参入してくる企業もある。ウチは前者の方ですね。シンプルに英国の靴が好きですし、手作業でコツコツやっているのが好き。ですから、じゃあ次はマーケティングやビジネスモデルの構築が急務だ、というわけではありません。
靴の底=「Sole」って別の意味で「唯一」という意味があるそうです。「Sole Option」という慣用句があって、それは「ただひとつの選択」という意味。つまり、「英国靴をレストア(リペア)するのならアソコしかないでしょ」というふうに言われ続けたいですよね。そのためには、たとえば、『JOHN LOBB』という靴がどういう靴で、背景や歴史を知っていなければならない。『JOHN LOBB』が分かってない職人さんが修理すると、とんでもないパーツを付けてしまったりする。文句を言うと、こっちの方がずっと長持ちしていいよ、と。直し方は何通りもあるわけで、その中で当然お客様の靴に対するリスペクトがあって、後はオーナーさんがどういう風に履きたいのかを詰めていく対話ができないとダメなんです。
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