日比谷店からほど近い日比谷公園に、1903年から営業を続ける洋食レストラン「松本楼」があります。同店のカレーは有名で、語らせれば終わらないマニアックな方がいる銘店です。カレーの味わいと同店の歴史は他に譲るとして、ここのモノづくりの姿勢にバタクは共感しているという話しを少々。
「守破離」という言葉をご存知でしょうか。武道や茶道など「道」の付く取り組みから発生した思想です。「守」とは先達の教えや方法を徹底して模倣・継承すること。「破」とはその「守」で学んだノウハウをさらに進めて工夫していくこと。「離」とは応用をさらに進めて自身のオリジナル的な作法を確立していくこと。大雑把に言えばそういうことです。「松本楼」のカレーは洋式文化が日本に導入されたとほぼ同時期につくられ、模倣から日本人に合う、しかも独自の、日比谷「松本楼」の味を具現化したメニューとして伝承されてきたと言います。
私たちがつくるオリジナル「バタク・クロス」も、「守破離」の思想や「松本楼のカレー」のモノづくりを参考にしたわけではありませんが、同種のコンセプトをそれらから感じ取っております。“徹底した模倣”の難しさ、応用に必要な創造性、そして新たな領域へと飛び出すリスク。当店の「バタク・クロス」は英国服地の模倣に終わりたくない、終わらせないという信念の下、日々改良を加えながら理想の服地を目指しております。
さて、「バタク日比谷」にご来店の際は、「松本楼」にて一息入れていただくというスケジュールはいかがでしょう。ツイード系のジャケット&トラウザーズを身に付けて、程良い寒さの中、枯れ葉が舞う公園を散歩。コーヒーと松本楼オリジナル・カレーで暖を取る。4時を過ぎればあたりはもう深い初冬の夕刻・・・。