流通量が日を追うごとに減り、「見つけた時が、買い時」と言われているのがヴィンテージ「トニック®」です。オリジナル「トニック®」は、‘50年代後半に開発された「ドーメル(※1)」社のモヘア+ウール服地で、それまで不可能だったキッドモヘア(幼いアンゴラ山羊の毛)の高混率を実現し、紳士服地の革命と賞賛されました。発売当時は、モヘアとウールの混率が50:50。タテ糸に2Ply(2本強撚糸)、ヨコ糸にフライヤー紡績という超低速で撚る3Ply(3本強撚糸)を配した構成でした。形状記憶合金のように曲げても折っても元に戻るような、シワにめっぽう強い性質と、独特の落ち着いた光沢がかつてのトニック®の魅力でした。その後、さらにモヘアの混率を90%にまで上げた「ニュートニック®」、モヘアの混率をあえて30%まで下げた「トニック2000®」などへと展開をはかりましたが、オリジナルの「トニック®」を求める声が絶えず、何度か復刻リリースが実施されています。現在、冒頭で申し上げた通り市場に残っているヴィンテージ「トニック®」は少なくなる一方で、とくに無地のものとなると手に入れることは至難の業。今後はさらに品薄になることは確実です。ウエイトが390g、しかも剛健な服地ですので、気温14℃〜20℃くらいの春先の時節がもっとも快適に過ごせると思われます。服地の性格から考えると、お仕立になるならタイトなフィットよりもイージーなゆとりのあるフィット&スタイルがオススメです。人気のある服地ですので、是非お問合せください。
ヴィンテージ・トニック®の争奪戦が服地マーケットで繰り広げられています。ネイビーのピンストライプは人気柄のひとつ。
きわめて人気の高い単色のブラック。通年で着られるフォーマル系ウエアに打って付けです。
※1:フランスを本拠とし、イギリスのミルに織らせている世界最古の服地マーチャントが「ドーメル」社です。