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黒の美学。英「ウイリアム・ハルステッド」のタキシード・クロス。

ひと口にフォーマルと言っても、単にブラック・カラーの服地を示すわけではありません。スーツ用のブラックとフォーマル用のブラックでは「黒の質」がまったく違うからです。フォーマル用に分類されるブラックとは「漆黒」であることが条件です。角度によってグレイに見える一般のスーツ地とは黒の深さが違います。フォーマル用のブラック服地には、ドスキン、タキシード・クロス、バラシア、サマー・ドスキンと言った種類が存在していますが、中でも現在、主流となっているのが「タキシード・クロス」です。「タキシード・クロス」という呼称からタキシード用であると思いがちですが、実はフォーマル・ウエア全般に用いられている服地です。タテ糸に梳毛糸(そもう いと)、ヨコ糸に紡毛糸(ぼうもう いと)を使った綾織りで、“毛羽が少なく軽快”。かつて礼服の王道とされて来たドスキンは毛羽が潤沢で重厚。端的に言えば、「風格と典雅さのドスキン」に比して、「軽やかで優雅なタキシード・クロス」という差異化が可能です。さて、今回ご紹介いたしますのは、「タキシード・クロス」が持つ美点を“バランス良く”備えた英「ウイリアム・ハルステッド」のお品です。1875年にヨークシャーで創業した老舗のミルで、ヴィンテージ愛好家の間でも高い評価を得て来ました。同社の「タキシード・クロス」には「黒」に対する独自の美学があります。たとえば、礼服用の黒とは刷毛で塗る漆のような漆黒の黒色ですが、そこにさらなる深さが表現されています。ブラック・スーツ、タキシード(ディナージャケット)はもちろん、モーニングやテイルコートなど礼装度の高いアイテムになればなるほど、その魅力を実感できることでしょう。

「ウイリアム・ハルステッド」タキシード・クロス(ウール・カシミヤ)/スーパー120’s/ウエイト380g