バタク日比谷店の目と鼻の先、銀座コリドー街にかつて「チロル」という洒落た店がありました。主な商品はチロリアン・ハットや同地方で織られるセーター、ニッカーズ、縮絨のチロリアン・ジャケットなどヨーロッパの山岳地方の衣料、中でも日常で着ても違和感の少ないものを取り扱っていました。常連には山口瞳、伊丹十三、麻生太郎、開高健など’60年代初頭の洒落者がおり、ヨーロッパ直輸入のセンスを競い合うように楽しんでいたと言います。その「チロル」の看板商品のひとつにトレンチコートがありました。近隣の銀座界隈をぶらりと歩く洒落者の間でも話題となったアイテムです。購入はパターン・オーダーで、当時の価格が約18万円。軍装よりも雨具としての機能にこだわったデザイン。たとえば、肩の銃床当てを完全に雨よけのショルダー・ヨークにアレンジするなど、男の機能志向を刺激する作り込みは他を圧倒していたと言います。すでに(’70年代の終わり頃)「チロル」は閉店していますが、1店舗ながらオリジナル・トレンチコートの発信力・影響力は多大で、当時銀座を物語るアイテムとして語り継がれています。バタクのオリジナル・トレンチコートもそんな伝説の「銀座のトレンチ」にならんことを願って今年も作り続けております。
バタク オリジナル・トレンチコート
サイズ:34,36,38,40,42
素材:高密度コットン100%(撥水・耐水性)
カラー:ベージュ、カーキ、ネイビー