先日、俳優のショーン・コネリーさんがお亡くなりになりました。訃報を知ってまず驚いたのは終の棲家としてバハマの首都ナッソーで家族と暮らしていたということでした。ナッソーと言えば007ゆかりの地。第四作目「007サンダーボール作戦」の舞台となった都市で青く美しいカリブ海が印象的でした。そんな素敵なロケーションの地で家族に見守られながら最期を迎えたと言います。正直、羨ましい最期だなと思いました。私が初めて007を見たのはテレビでした。私が子供の頃は各テレビ局が地上波のゴールデンタイムで毎日のように映画を放送していた時代で007シリーズも定期的に放映されていました。初めて見たのは第三作目「007ゴールドフィンガー」だったと記憶しています。小学生の私が見ても十分楽しめる娯楽性に富んだ内容に加えて、ジェームズ・ボンドのカッコ良さたるや、子供ながら憧れたものです。それから007シリーズのファンになり今に至るわけですが、ジェームズ・ボンドには良くも悪くもたくさんのことを教えてもらいました。そんな初代ボンド役を演じたショーン・コネリーさんですが、スコットランド出身の田舎のあんちゃんでした。シリーズ第一作目「007ドクター・ノオ」で主演のボンド役に抜擢されたものの、それまでスーツを着る習慣が無かったため監督のテレンス・ヤング御用達のテーラー「アンソニー・シンクレア」で初めてスーツを仕立てます。初めてのスーツということもあり、スーツ姿がまったく絵にならないショーン・コネリーに対してテレンス・ヤングは「一日中スーツを着て生活をしてスーツに慣れろ」と言います。その甲斐もあり見違えるほどスーツ姿が板についたジェームズ・ボンドが誕生するのです。元々ボディビルで鍛え上げた肉体美の持ち主でしたのでスーツが似合わないわけが無いのですが、それにしてもここまでスーツ姿がスクリーンに映える俳優もそういません。そして、スーツ姿だけでなく立ち居振る舞い、所作も美しくこなせるほどになるのですが、これは相当な努力を要したと思われます。立ち居振る舞いや所作は心とつながっていますからね。ところで、コネリー・ボンドが着用したスーツは正統な英国スタイルと思われがちですが、実はちょっと違うのです。ナチュラル・ショルダーにゆとりのある胸のドレープ、細いナローラペル、絞りの緩いウエストラインなど当時のパリやローマの様式を取り入れたコンチネンタル・スタイルでした。映画はスタイルを学ぶのに最高の教科書と言えます。第一作目「ドクター・ノオ」から58年経った現在でもジェームズ・ボンドのスタイルは男の装いのお手本としてたびたび注目されています。これは初代ボンドを演じたショーン・コネリーの偉大な功績によるものです。そして私もいい歳した大人になりましたが、007シリーズを見る度に子供のようにワクワクしてしまうのは純粋に男の憧れだからなのでしょう。少し前に神戸でTOYOTA2000GTを見かけたときは興奮して思わず声を発したくらいですから(笑)。※厳密にいえばTOYOTA2000GTはボンドが運転していないのでボンド・カーではありません。(バタク大阪 工藤)
追伸、ショーン・コネリーさんの訃報に際して日本語吹き替えを担当した若山弦蔵さんが追悼コメントを出していましたが、なんだか嬉しかったですね。ショーン・コネリー=若山弦蔵さんでしたからね。