かつて日本人はブラックという色に対して、偏見を持っていたようです。たとえば、結婚式の2次会にグレンチェック・スーツとブラック・タイを組み合わせたスタイルで出席しようものなら、大ひんしゅくを買ったものです。葬祭の色調だと決めつけられて来たブラック。それが今や新卒の学生が買い揃えるリクルート・スーツの標準色になっているのはご存知の通り。ただし、「ブラックを楽しもう」という気分よりもフォーマル・ウエアに見る社会性に共感した選択だと言うことは明白でしょう。とはいえ、ブラックの着方は多彩です。黒色の持つ重厚で厳か(おごそか)な印象だけでなく、よりリラックスしたオフの色調にも活用できるポテンシャルを秘めています。写真のように柔らかな素材感を持つブラック・カシミアの場合はそれが顕著で、タッターソールのウエストコートや、上質なニット・ウエアと組み合わせるだけで、都会の並木道を散策しているイメージを楽しむことができます。お試しになられてはいかがでしょう。
※写真 カシミア100%の高級フランネル。やや茶色がかったブラックに、彩度が一切ない。ウエストコート用のタッターソールもカシミア100%。