Column

スーツを着た大統領。

アメリカの政治家が服装などによるイメージ戦略の有効性に気づいたのは、1960JFKとニクソンの大統領選挙戦が端緒だと言われています。あまりにも有名な逸話だけにご存知の方も多いはず。勃興著しいTVのメジャーネットワークを通じ、生中継で両大統領候補者の政策論争が戦われ、僅差で優位に立っていたニクソン陣営を一夜にしてJFK陣営がくつがえした展開にアメリカ中が驚きました。JFKの服装・容姿が自信にあふれて見えたこと(本人はオドオドだった)、ニクソンがメイクや服装を軽視したことで、強行遊説の疲れた顔付きが表情全面に露呈してしまったことが敗因だと分析されました。これを契機に大統領戦をはじめアメリカの選挙には候補者のイメージ戦略をケアする専門チームやコンサルタントが登場。服装や表情、色と言った材料を候補者のイメージ戦略に活用するようになりました。しかし、こうした見た目の戦術的流れを考えついたのはJFKのキャンペーン・チームが初めてではありませんでした。当時、共和党アイゼンハワーの副大統領を務めていたトルーマンこそが選挙と服装・身だしなみの有効性を説いた人物の一人でありました。何と言ってもアイゼンハワーの後任として、後に第33代大統領となるハリー・S・トルーマンには抜きん出たスタイルがあったことをご記憶でしょうか。グレイ系・ダブルブレストのライトウエイト・スーツ。ともすれば、着道楽と非難されるギリギリ手前で止めているボウタイ、完璧なモーニング。ホワイトハウスにはお抱えとして出入りさせていたテーラーが常勤。私用のドレスシューズは96足にも及びました。役人的な風貌のニクソン、成熟にはもう少し時間が必要なJFKに比べればトルーマンの“見映えの戦略”コストは圧倒的かもしれません。政治家としての、カリスマ性では見るところがないトルーマンですが(原爆投下を下した大統領とされているが)、先代のアイゼンハワー、後任のJFKに比べフォーマルの着こなしは見習うべき点が多々あります。それは、先述したスタイルです。普遍性を優先させた欧州的な中庸感。信仰・出自の差違を乗り越えたグローバリティ。メンズウエアの体系を熟知したセンス。一時期、自らがメンズショップを経営していたという話も説得力があり、自信にあふれたクラシック・スタイルが輝いて見えます。だからでしょうか、アメリカのメンズWeb誌(※)では彼のことをこう評しています。歴代最高位に位置する「スーツが似合う大統領」だと。

※「closet factory」。アメリカのウエブサイト。「米国史上、最もファッショナブルな大統領トップ10