Column

きりっと、TVフォールド。

▇ 実用品から服装品へ。

ダークカラーのスーツには、白かアイボリーのポケット・チーフを挿すことで、ひとつの普遍的スタイルが完成します。なかでも、白い麻のポケット・チーフは、私用からビジネス・ユースまで実に使い勝手のいい服装品だ、と言えます。テレビ・メディアが家庭に普及し始めた50年代末。男性アナウンサーが麻のポケット・チーフをスクエアに折って身に付けたことから名付けられた「TVフォールド」。それ以前は主に「手を拭く」「汗を拭う」「鼻をかむ」といった実用ハンカチとして使われていました。たとえば、トラウザーズのポケットに無造作に収め、麻の吸水力と速乾性の良さをさまざまな生活場面で活用していたのです。俳優クラーク・ゲーブルが40年代〜50年代に出演した作品には、無造作に胸のポケットに挿した麻のポケット・チーフの今とは違う実用的な使い方を垣間見ることができます。

▇ クラシック・スーツの潮流に呼応して。

正統派の「TVフォールド」はと言えば、60年代の半ばに一斉にフェイドアウトしましたが、90年代に復活。今ではスーツ・スタイルには欠かせない服装品になっています。では“なぜ”60年代後半にメンズ・ウエアの潮流から姿を消したのか。おそらくその理由には主に次のような現象が関係していると考えられます。67年を境にしてスーツの潮流がクラシックからモードへと大きく移り変わります。タイトな身幅、広いラペル。これにより胸ポケットの存在が希薄になりました。つまり、ポケット・チーフの上端がほとんどラペルに隠され露出せず、挿したチーフがアクセントの役割にならない。雰囲気的にも正統派できちんと見える「TVフォールド」は、モード的なスーツ(デザイナー・スーツ)との調和が取れなかったのではないでしょうか。

▇ バタクとボンドとTVフォールド。

2003年にバタクがコネリーボンド・スーツを新宿伊勢丹などで既製展開した時、私どもは「TVフォールド」をクラシック・スーツの必要アイテムのひとつとして提案し続けました。結果、ジワジワと2〜3年掛けて、スクエアに折った麻(アイリッシュ・リネンなど)のチーフが日本の市場に浸透していったことを想い出します。今やビジネスマンの胸ポケットに際立つ麻のチーフ。創業以来、バタクでは特別なこだわりを持ち続けているアイテムになっています。