バタクとのお付き合いはかれこれ20年以上になります。注文服を着るようになってから実感したことは「注文服こそが正しく、既製服の方が異常である」ということです。人間の肉体なんて不揃いもいいところ。不均一で、左右もバラバラ、厚みも立体感もまったく違いますよね。寸法という尺度だけでなく、人物の雰囲気もバラバラ。それを強引に標準形態・画一化したスタイルへ押し込むのが既製服です。無理があるなあ、とつくづく感じております。既製服の普及以降、あたかもそれが正しい服づくりだと勘違いして、注文服にまでその量産規格品のような発想が影響を与えているような気がします。そういう意味で、バタクさんは真の意味でのビスポーク、不揃いの服づくりに挑戦しているように思えます。本家のサヴィル・ロウでさえ、もちろん世界中のテーラーを眺めても、そこまで考えているところは稀有ではないでしょうか。