ビスポークだからといって、気負い過ぎない。むしろ、普通であることを楽しみたい。やはり、洋服が目立ち過ぎるのは好きではありません。企業に勤めているからではなく、いたって普通でいながら“いい雰囲気”や“いい趣味性”を醸し出すことこそが理想であり、是としているスタイルだからです。いい雰囲気とは、経年により味を醸し出すこと。だから、英国が持っていたモノに対する精神性をずっと支持してきました。鞄も靴もそうですが、英国のモノは経年により完成へ向かいます。英国の硬くてシッカリした服地でスーツを仕立てると、数年後には身体と馴染み、一体化する感じがします。仕立て上がったばかりのスーツとはまた異なった表情が時間を経るごとに深まっていく。自分も年齢を重ねていきますので、それと呼応して円熟していく姿がとても魅力的に思えるのです。