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なぜ、バタクはフォーマル・ウエアにこだわるのか。

正式なフォーマル・ウエアを仕立てられるテーラーの減少。本礼装、準礼装、略礼装と言ったフォーマル・ウエアの差違と役割、各々の本格的なドレスコードを理解して、すべてをディレクションできるモデリストの減少。そのような時代に入っていることは紛れもない事実です。当の英国ですら正式なフォーマル・ウエアを仕立てることができる人材は極めて少ないと聞きます。このような現状の中で私たちにできることは、先輩たちから受け取った素晴らしいフォーマル・ウエアを素晴らしいまま未来に渡していくことだと常々考えています。なぜ、フォーマル・ウエア分野の人材が減少し続けているのか。ひとつに正式なフォーマル・ウエアにはそれが本来有する独特な手法とルールを学ぶ必要があるからです。それを嫌い、極彩色のマテリアルを使ったり、伝統的なルールを軽視したりするフォーマル・ウエアは日本に限らず、英国でも決して珍しい存在ではありません。また、日本ではモーニング・コートやイブニング テイル・コートと言った本礼装を着る機会がきわめて少なく、準礼装であるディレクター・スーツやディナー・ジャケットでさえ珍しく、略礼装であるブラック・スーツが礼装の9割を占めるという事情もあります。言ってみれば、フォーマル・ウエアに関しては体系的な序列と位置づけがないままの状態なのです。しかし私たちは、イブニング・テイルコートからブラック・スーツに至る本来のフォーマル・ウエアを理解し、その美学と体系に基づくレガシーを今後も伝承させていくべきだと考えます。なぜなら、本礼装、準礼装、略礼装で構成される流れの中で仕立てた礼装は、同じブラック・スーツでもニュアンスが違います。格式から略式への引き算を理解するとしないとでは、仕上がりの雰囲気に差が出ます。ここに、フォーマル・ウエアに対する「お客様の気づき」をご提示できると考えたのです。単に黒を着ればいい、という発想ではなく、コール・トラウザーズやオッドベスト、さらにはフォーマル・シャツなどの活用を通じて、積極的なフォーマル・ウエアとの係わりをお客様に楽しんでいただきたい。社会と係わる服だからこそ、もっと意志と意図をもって活用していただきたいと私たちは考えたのです。