年齢を重ね、いろいろな失敗を通じて学ぶことは誰にでもあることだと思います。それは、仕事はもちろん、恋愛や遊び、モノ選びなど多岐にわたり、最初は意識しながらであり、やがては無意識のうちに自分の習慣として体得していくものです。男の服装もそうした学習の連続からカタチづくられるもので、最初からセンスが良い人などいないのではないでしょうか。だからでしょうか、世襲の貴族階級に対して、彼らに追い付こうと失敗を重ねながら、自分のチカラで地位や品格を確立した階層である英国のジェントルマン(ジェントリー階層の人)には酸いも甘いも噛み分けた大人イメージがあるのです。アクの抜けた、すっきりとした、実に控え目なセンスというものは若い人にはなかなか身に付けられるものではありません。長い時間をかけてひとつひとつ余計なものを捨てて行った末に訪れるセンスこそ、大人の趣味というものなのでしょう。英「カイノック」のGLENESKに編纂されているジャケット用フランネル地(320g)は、実にあっさりとした品が揃っています。これみよがしなフランネルではなく、油の抜けた味わいとでも喩えられるような。長い時間を生きていると、あっさりとしたものが心地よくなるようです。