スーツの上に着るから、ゆったり余裕を持たせて作る。だから、コートの採寸には糊シロがあってもいいと思われがちですが、実はけっこうシビアな部分もあるのです。その顕著な例が「着丈」。着丈がほんの数㎝長いか短いかで、受け取られる印象がまるで違ってきます。有名な話ですのでご存知の方も多いかもしれません。映画「ブリット」でS.マックイーンは、衣裳のコートの丈を自らの判断で短く作り直させたそうです。そうすることで、アクション感の際立った、刑事の雰囲気を狙ったと言われています。標準的なコート丈(身長によるバランス)よりも短く採れば軽快でアクティブな印象になり、長く採れば優雅に見える。これは、誂えるコートそのものが持つキャラクターにも言えることです。カバート・コートやチェスターフィールド・コートのように、フォーマルにも通用するコートの場合、優雅さを作り出すためには「どのくらい長くするか」がポイントになります。一方、日々のビジネスで着るようなコットン製コートの場合は、活動的な印象を与えるために「どの程度短くするか」のサジ加減が重要だと考えられています(コットン・コートでも優雅に見せるには着丈を長く採ります)。写真は残暑の最中、注文依頼が増加しているカバート・コート(ベージュ)とチェスターフィールド・コート(ネイビー)です。身頃は余裕を持たせ、着丈はやや長め。優雅な雰囲気を持つコートですので、スーツはもちろん、ディナージャケットの上に羽織るフォーマル・シーンのコートとしてもオススメしております。